Orca's Song -KAMUNA 3- ライナーノート
アルバム『Orca's Song』には日本語の解説を付けませんでした。いつもぐちゃぐちゃと暗い解説が入っていて邪魔だという声がありまして、素直に反省し、シンプルに曲目などを並べただけのものにしています。
それ以上の解説(作曲者の暗めのモノローグ)も読みたいな、という奇特なかたのために、ここにこっそり解説ページを置いておきます。
いっぺんに書かず、少しずつ書き足していくかもしれません。
なぜ6年もあいてしまったのか
前作(KAMUNAのセカンドアルバム)『アンガジェ』を作り上げたのは1996年の年末でしたから、3枚目が出るまでに6年以上、足かけ7年の月日が流れてしまいました。
理由はいろいろありますが、まず、KAMUNAの二人が家庭崩壊の危機に陥っていたということがあります。
創作や演奏活動では食べていけず、家庭内経済の建て直しを余儀なくさせられました。
次に、もうこれ以上KAMUNAのアルバムをインディーズで出すのは嫌だという気持ちが強かったということがあります。なんとしてでも一般流通させたい。そのめどがつくまでは出すのはやめようと思いました。
もう日本の市場を相手にしていては駄目だと、アメリカのケーブルテレビ(Bet On Jazz)のオーディション番組にデモビデオを送ったりもしました。
音楽業界のツテを頼りに、あちこちお願いして回ったりもしました。
しかし、結局、道は開けませんでした。
小説も出版の道を閉ざされていたので、そちらも大変でした。そんなこんなで、時間ばかり経ってしまったわけです。
『Home In The Rain』や『Escape from Spring』は、そんな失意の中で書いた曲です。
Orca's Song Vocalバージョン
次のアルバムは『オルカ』のヴォーカルバージョンを入れて、より多くのリスナーを獲得する、ということはかなり前に決めていました。
英語の歌詞を書いてくれる人を捜すのにずいぶん時間がかかりましたが、結局はいちばん身近な茅野美ど里さんにお願いすることになりました。
歌詞ができあがったのは99年くらいだったと思います。
とんでもなく暑い夏、ゴロと二人だけで、越後にこもっていたとき、安物のラジカセにハミングで吹き込んでカセットテープを送ったのを記憶しています。
できあがってきた歌詞をつけて歌ったテープを彼女にチェックしてもらったら「Rが全部Lになっている」と指摘され、すっかり自信をなくしました。
やはりちゃんと英語で歌える歌手に歌ってもらおう、と、このときから考えていました。
実は、相棒の吉原センセが「歌える」人だというのを、この時点ではまだ知らなかったのですよ。
彼は当時、「俺はギタリストだ」という自負が強くて、あまり人前で歌うことはなかったようです。少なくとも僕は聴いたことがありません。
『アンガジェ』で、ハミングでギターとユニゾンというのをやっていますが、そのときもちゃんと歌ったのは聴いていませんでした。
その後、突然吉原センセから、弾き語り風の自主制作CDが送られてきて、初めて彼が歌う人なのだと知りました。
営業的に行き詰まり、弾き語りの仕事を得るため、デモテープ代わりに作ったということでした。
へええ。うまいじゃん。感心。
アーニーのこと
ヴォーカルを吉原センセに譲ったのは、もうひとつ大きな理由があったんですが、それは今はまだ秘密。
ヴォーカル入れは普通とは違う神経を遣いました。
2回録ったのですが、どっちも吉原センセはアルコール持参。二度目のときなどはいきなりワインをボトルで持ってきて……。あ〜あ。
ま、そのへんもこれ以上は秘密。
で、話がいきなり飛びますが、間奏にサックスを入れようと言いだしたのは吉原センセです。
なんとかヴォーカルを入れた後、しばらくしてからうちに来て「いいサックスがいるんだよ」と言い出すわけですね。
それがアーニー(アーノルド・バルーク)だったんですが、これも大変でした。
最初のレコーディングの日、前日になって「マウスピースを六本木で仕事をしている店に忘れてきてしまったので明日はいけない」と連絡が入りおじゃん。この時点で吉原センセ、「どーしよーもねーやつだ」と本気で怒り出し、まあまあ、となだめて、なんとか2回目のセッティングにこぎ着けました。
で、その二回目、今度はカーナビが狂ったとかで、「今、すぐそばに来てます」と電話してきたのが、高津区から。隣の隣の区。
「There's a river.」
「River? There's no river near here.」
なんて会話があって、そこからまた1時間くらいして、ようやく到着。
アーニーは後で知ったのですが、結構な歳で(59歳と言っていたかな)、四畳半のタヌパックスタジオにたどり着いたときにはすでに疲労の色が……。ああ、これは短期決戦で決めちゃわないと難しいなあと、すぐに思いました。
しかし、うちのスタジオでサックスを録音するのはこれが初めて。まあ、なんとかなるだろうと、ヴォーカルよりレベルを落としてリミッターなどをかけて……。
アーニーはアメリカ人ですが、非常に神経質で、日本人より日本人的。
プレイはなかなかよかったんじゃないでしょうかね。かすれたりするところも、まあ、味というか。ハートがあってよかったです。かつてのジェイク・コンセプションみたいな感じかなあ。
//続く//